木村拓哉主演『風間教場』最新長編を読んでみた。ちょっと?【ネタバレ】

長岡弘樹著『風間教場』最新作

『風間教場』(長岡弘樹著)初の長編、読んでみた。

『教場』シリーズ初の長編『風間教場』ですが、長編ではありません。

今までの3作はすべて、第一話から第六話と別れていました。それぞれ主人公となるべく学生が違っていました。

では、最新作『風間教場』はどうかというと、長編ですから第一話から第六話と別れてはいません。しかし、小エピソードが集まっているだけで、とても長編とはいえません。確かに、主な登場人物は全編にわたって出てきますが、内容的には小編の集まりです。

白髪教官・風間の冷酷非情な鬼教官のカリスマ性がなくなった!

それは、冒頭の「構内の掲示板」を風間教官が見るところにも、早くも現れています。それは、
教場内のコルクの掲示板の右上には、何の文書もありません。静かに安堵の息を吐き出しつつ、風間はその場所を離れます。
と、ここには【殉職者が出た際の訃報専用】警察官の死亡報告書が掲出されるのです。だから、風間の冷酷非情な鬼教官の真の姿(優しさ)が説明されてしまっています。

木村拓哉「教場」

木村拓哉主演のTVドラマのポスターはかなり出回っています。誰もが一度は見ていると思います。『風間教場』、本の帯にもなっています。
木村拓哉がなりきっている白髪教官・風間公親、こちらの何もかもが見透かされているようなその眼光とたたずまい。
しかし、『風間教場』の風間教官には、そんな恐ろしさはありません。まぁ、全編に教官として出てきますので、教官の日常が語られてしまいます。だから、冷酷非情な鬼教官のイメージが消えて、正直ちょっと切れるおじさん風になってしまいました。

『教場0』の平優羽子刑事が、白髪教官・風間公親の助教に。

これは、おかしい。かつて、刑事を辞める決心をしていた平刑事。風間教官の右眼が義眼になった原因をつくってしまった新米刑事です。そのことにより、刑事を辞る決心を翻したのです。風間の右眼を千枚通しで刺した犯人・十崎を捕まるためです。そんな平刑事が、新人を教育する教場の助教になるでしょうか?

平刑事がまず優先して取るべき行動は、十崎を逮捕することでしょう。
『風間教場』には、十崎逮捕のことはいっさい触れられていません。
譲許でもおかしくはない理由は、風間が右眼を刺されてから時間がかなり経っているから、確かにそう考えることもできます。しかし、平刑事は十崎を逮捕できたのかどうか、風間教官になった理由は説明されてしかるべきでしょう。

『風間教場』の内容【ネタバレがあり】

白髪教官・風間公親に肩を並べる?パフォーマンス好きで目立ちたがり屋の新校長・久光成延(ひさみつしげのぶ)。久光校長は、風間に課題を与えます。

「落伍者の数だ。毎年10人は下らない」
「来年度は一つ、落伍者ゼロの教場を作ってみよう、とな。その仕事を、風間くん、きみに任せたい」
(つまり、辞めたいと望む学生を辞めさせない鬼教官でいろ)
「もし一人でも学生が辞めることになったら、どうなるか分かるか」
風間は顔を上げ、校長の方を見ます。
「もう一人にも辞めてもらう、というのはどうかな。その教場の責任者にもな」

『風間教場』は、学生を辞めさせない課題をクリアーするために、冷酷非情な白髪・風間教官が心を砕くストーリーなのです。

風間教官が取る手段が、人情に訴えることが多くなります。だから、『風間教場』での白髪・風間教官のイメージは、「冷酷非情な」から「人間味ある」に変わってしまうのは、否めません。

交通整理をしていた紀野理人が後輩学生・漆原透介(うるしばらとうすけ)を遅刻させないためにとった行動から、紀野理人は突っ込んできた車にはねられ死亡します。そのことに悩み退学を決意する漆原透介。辞めさせないために風間がとった方法とは……
「きみはもう人の命を背負っているからだ」

ひそかにジャーナリストになることを目指していた兼村昇英。英語も堪能、文章も上手いビジネスマンタイプの学生。彼のレポートの一つに、こうありました。
「女子学生の何人かは、過去に喫煙していたか、今も喫煙している模様です」
喫煙は退学処分になります。

しかし、一人の女子学生から風間は次の情報を得ます。
女子学生は喫煙していたのではありません。ニコチンには記憶力を良くする効果があると、ニコチンパッチを腕にはっていたのです。
風間は兼村にこう告げ、ジャーナリストになることを断念させます。
「きみが言ったとおりだ。十分に人を傷つける凶器になるな。誤報というやつは」

杣(そま)利希斗の母親は警察関係。どこか捉えどころにない風貌。彼の妹・瑞菜は大学4年生で、彼女も警察官志望
伊佐木陶子の父親と母親は、県警幹部です。
この二人は親が警察官であるがために、簡単に警察学校を辞めるわけにはいきません。辞めるには、親を納得させる理由がなければなりません。
そんな二人はいつしか付き合い、伊佐木陶子は妊娠して休学します。それを見た、妊娠を知らない杣(そま)も、退学を決意します。退学届けには、一身上の都合としか書いてありません。

風間は、杣(そま)に、列挙させます。それは、
○警察学校を辞めた方がいい理由
○警察学校を辞めない方がいい理由
そして、風間は
「辞めない方がいい理由」に『家庭』という一語を書き加えます。
「退校しようとした本当の理由は、実にシンプルだった。ひとことで言えるほどにな。責任感だろう。違うか」
そして、退校することが責任ではない、とこう告げます。
「責任を感じる先を間違っていないか」
最後に、先にあげた人の命を背負っている漆原透介のことを話します。

平優羽子のブレる性格『教場0』のキャラクターではない

平優羽子は、学生の柔道界の猛者、比賀太偉智に交際を迫られます。
「ぼくが辞めたら、風間教官もクビになるんですよね。風間教官をクビにしたくなかったら、ぼくと付き合ってください」
平優羽子は激しく動揺します。

そんな部下、平優羽子を助けるべく、風間は比賀に柔道の十字絞めを教わるふりをします。
最初は緩くして、比賀にこう言わせます。
「もっと強く絞めても平気ですよ」
「そうか、ではこのくらいはどうか」
比賀の口から泡だった唾液が漏れます。

「教官を脅迫するとは、いい度胸だな。いいか、一つだけ言っておく。」
口の端から涎を垂らしたままぐったりしている比賀に、風間は顔を近づけ、言い放ちます。
「私を甘く見るなよ」

冷酷非情な鬼教官・風間は元気を取り戻した助教、平優羽子にこう言います。
「杣と伊佐木を育てるのは、きみだ」

最後に

『風間教場』は初の長編ですが、『教場』『教場2』『教場0』のように第一話から第六話に分けてないだけで、小エピソードが集まったオムニバス長編です。
だから、推理小説の長編だからできる重厚な構成を『風間教場』に期待してはいけません。

『風間教場』(2019年12月18日発刊)おまけ

『教場』の宮坂定(みやさかさだむ:TVドラマでは工藤阿須加)が、学生の世話役として出てきます。

『教場』の宮坂定
命を助けられた警察官の息子平田(TVドラマでは林 遣都)が成績が悪かったので、宮坂定はもっと悪い成績を残すことに。しかし、
「成績がビリっていうは、確かに辛いよ。教官に殴られたら、そりゃ痛いよ。だけどな、他人から憐れみを受けるってのも、相当しんどいぞ」
と言われ、宮坂は平田に殺されそうになりました。(平田は退学)

→ 木村拓哉、フジTV「教場」白髪教官に。原作『教場』読んでみた。

→ 木村拓哉『教場』エピローグ、白髪・風間公親教官の右目は義眼

→ 木村拓哉、白髪・風間教官『教場2』を読んでみた。

→ 木村拓哉『教場0 刑事指導官 風間公親 』を読んでみた。右義眼の原因?

→ 木村拓哉『教場』を語る「主役が教える名シーン」

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