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「教場0 刑事指導官 風間公親」は、新米刑事の教場
風間道場とは?
難事件の増加に業を煮やした県警本部長が、
優秀な刑事の育成を目的として発案したという一種のタスクフォースだ。
(単行本・帯より)
「教場0」は、警察推理小説としてはもの足りません。
「教場0 刑事指導官 風間公親」は、風間道場に派遣された見込みのある3か月の新米刑事をいかに風間が指導しているか、という「教場」と同じく指導の仕方に重点が置かれています。
また、風間は犯人がどんなトリック(殺害方法)を使ったか、現場に臨場した時点で把握してしまいます。まあ、『刑事コロンボ』みたいな展開ですね。
新米刑事は、風間の指導のもと自分で考え、事件を解決していきます。
「こんな謎も解けないなら、交番勤務からやり直せ」と、突き放していますが、それが風間の指導・愛情なのです。だから、風間が犯人に直接尋問することはありません。あくまで犯人には新米刑事を対応させます。
これは、「教場」の学生に対する退校届の半引導と同じです。いわく、
「これ預かっておけ。わたしが破れと支持しない限り、一週間後に——」
(書いて退校せよ)
風間公親のキャラをもっと掘り下げて欲しかったが…
「教場」シリーズは、風間公親のキャラクターがあってこその警察小説なので、もう少し「教場0」では風間公親の人格形成について語って欲しかった。風間公親の小・中学校時代や若い頃の刑事のエピソードがあってもよかったと考えています。
しかし、「教場」シリーズは、あくまで風間公親の指導方法がメインなのでしょう。
「教場0」のエピソード
- 第一話 仮面の軌跡
新米刑事・瓜原潤史(うりはらじゅんじ)
風間公親が1つの質問を口にするたびに、強い緊張を強いられています。
犯人・日中弓(ひなかゆみ)の「日・中・弓」が一筆書きできることが証拠になります。 - 第二話 三枚の画廊の絵
新米刑事・折本直哉(おりもとなおや)
「刑事失格だ。交番勤務に戻れるよう、わたしが本部長に転属願いを書いてやろう」
画家デ・キリコとイヴ・タンギーの関係からの話には無理がある? - 第三話 ブロンズの墓穴
新米刑事・荒城達真(あらきたつま)
「手取り足取りすべてを教えるつもりはない。一を聞いたら十を知り、自分から動くこと。それがきみの仕事だ」
「事件を解決するには、犯人が出した謎ではなく、風間の出した謎を解け」
連想ゲーム「紙に書いた13個の言葉のうち、10個目『迷宮入り』が君の本心の表れだ」
連想ゲームの10番目の言葉が本心だということを調べてみると
「心の底が最もよく反映されるのは13個目の言葉である」
この風間という教官は、ただ無口なだけでなく、13を10と言うタヌキ親父的なあざとい一面をも併せ持っています。 - 第四話 第四の終章
新米刑事・早坂すみれ
「ロカールの法則とは、物体同士が接触すると、両方に、かならずその痕跡が残る、という法則です」(最初から、犯人のトリックに気づいていた風間) - 第五話 指輪のレクイエム
新米刑事・大里翔子(おおさとしょうこ)
「都市ガスには一酸化炭素は含まれていない。別のガスだろう」
フッ素樹脂で加工されたフライパンを空焚きすると…そんなに怖い?
「それを突き止めることだ。交番勤務に戻りたくなければな」
「第六話 毒のある骸」風間の右義眼の原因が判明!
新米刑事・平優羽子(たいらゆうこ)
「先にテンゴクに行っています」テンゴクとは、10・5・9。つまり1059室。
事件解決後、平優羽子は風間公親を居酒屋に誘います。刑事を辞めることを風間に伝えるためです。平はなかなか言い出せず、風間と店を出ます。
外には、かつて風間に逮捕されて恨みを持つ十崎(とざき)が暗闇に潜んでいました。平は、自分のストーカーだと思い、十崎に近づいて行きました。
しかし、十崎は駆け出し平の脇を通り過ぎようとします、手には千枚通しを持って。平は十崎を止めようと手を伸ばしますが、ベルトをつかんだだけで転んでしまいます。無防備な平に千枚通しを振り上げる十崎。
瞬間、平は横に突き飛ばされます。風間に助けられたのです。
その時、風間の右眼には千枚通しが刺さっていました。
→ 木村拓哉、フジTV「教場」白髪教官に。原作「教場」読んでみた。
→ 木村拓哉『教場』エピローグ、白髪・風間公親教官の右目は義眼!
終わりに。新刊『風間道場』
ここで生き残った者だけが警察官になれる。
最新作は初の長編(2019.12.18刊)。
鬼教官に与えられた使命は「一人の退校者も出さないこと」——。