恋母(恋する母たち)©️TBS金曜ドラマ『恋する母たち

第3話『恋する母たち木村佳乃・吉田羊・仲里依紗が落ちる!

第2話までは、まだ恋母たちは日常から逸脱するまでには恋に落ちていません。普通の女性にもよくある予感程度です。
しかし、第3話になって3人の恋母たちに大きな変化が訪れました。

設定的には一番落ちそうもなかった吉田羊さん演じる林優子キャリアウーマンママが、意外にあっさり若い部下赤坂剛とベッドを共にしてしまいました。柴門ふみさんも「赤坂が全裸で優子に迫るシーン」と語っているシーンです。第3話の最後には木村佳乃さん演じる石渡杏小泉孝太郎さん演じる斉木とお互い「好き」と告白しあいます。

仲里依紗さん演じる蒲原まりは、阿部サダヲさん演じる今昔丸太郎の助言によって、森田望智さん演じる夫の愛人山下のり子から夫を取り戻すことに成功しました。第4話になって、まりにも大きな変化がやってくるようです。

ところで、柴門ふみさんは「女性を赤裸々に描くと決めた以上、攻めの姿勢でいくことに。春画などを参考にしながら大胆に描くことにしました」と語っていますが、TVドラマでは、またこのキャストではあまり露出はないと思います。映画にしてくれたら良かったのかもしれません。

柴門ふみ『恋する母たち』を語る「エロスは本能」

エロスは本能。封印しないで上手に発散すればいい。

(以下、『婦人公論』より)

「まだ私は女性を描き切っていない。描き切るまでは死ねない」

恋母』は、10年前に夫が失綜して以来、一人で息子を育てている石渡杏と、弁護士の夫を持つセレブママ・蒲原まり、一流企業に勤務するバリキャリママ・林優子の3人が、息子の通う私立の名門高校で偶然出会うところから始まります。

脚本は大石静さん。主題歌は松任谷由実さんで、大変ありがたいです。
杏役に木村佳乃さん、優子役に吉田羊さん、まり役に仲里依紗さんとキャスティングも最高です。

マンガ『恋する母たち』©️小学館

「母親たちの恋愛事情」をテーマに作品を描きたいという構想は、10年以上温めていたものでした。
40代の頃、私の周囲には専業主婦として子育てをする人や、共働きで子育てに奮闘中の人、離婚をしてシングルマザーになった人や、未婚のまま母になったという人など、さまざまなパターンの母親がいました。そして誰もが口をそろえて言っていたのです。「恋がしたいわ」と。

(柴門ふみさんの娘と息子が巣立ったことと)
私の背中を押してくれた要素がもうーつあります。53歳で初期の乳がんを患い「死」を意識したときに、

まだ私は女性を描き切っていない。描き切るまでは死ねない

と思いました。なぜその時描くことができなかったのかといえぱ、男性向けのコミック誌を中心に作品を発表し続けていたから。妻は浮気をしてはいけない、母親には性欲はない、それが男性読者が求めるキャラクター像だと、編集サイドから求められていました。『あすなろ白書』のなるみでさえ、可愛くない、共感できないと言われました。そういう編集サイドと妥協点を探り、折り合いをつけて描き続けてきたのです。

しかし、どうしても女性の真の姿を浮き彫りにする作品を世に出したかった。とはいえ『恋母』は母親を神聖化したい日本の男性たちに受け入れられないと思い……。
そこで自ら女性週刊誌に企画を持ち込んだところ、快諾していただいて。かくして男性読者に気兼ねすることなく、女性だけに向けてメッセージを発信するための環境が整ったのです。

婦人公論・柴門ふみ©️婦人公論

「母親の不倫を推奨するのか」

といったお叱りの声も少なくありませんでした。私はどんな恋であろうと人の恋愛に他人が口出しをするものではないと考えていますが、基本的に不倫には反対です。倫理に反するからというより、恋の代償が大きすぎるからです。そうはいっても、恋は理屈ではなく感情で落ちるもの。人妻であろうと母親であろうと、人を好きになる気持ちをコントロールすることはできません。

からこそ私は『恋母』を描かなければと思ったのです。
フィクションには人の欲望に歯止めをかける力があります。たとえば格闘技を描いた作品を通して読者がストレスを発散すれば、それは暴力行為に抑止カがかかることを意味します。不倫願望もまた同じでは。

疑似体験を通して、ワクワクしながら心のガス抜きをしていただきたいと考えました。現実的に恋愛相手がいて、今まさに禁断の果実の甘い誘惑に身をゆだねてしまおうかというギリギリのところにいる人には、「母親が恋愛に踏み切るとこんなに酷い目に遭いますけれど、どうします?」と問題提起したつもりです。

杏とまりはなんだかんだいっても子ども命の母親ですが、世の中には母親=子ども命、という世間の価値観に苦しんでいる女性もいます。
そこで優子は自分には母性愛が欠落していると自覚し、そんな自分を責めているという設定にしました。優子は主夫である配偶者を裏切り、部下である赤坂との関係に走ります。
これは昭和の夫が専業主婦である妻に対して行っていた浮気の構図を男女を逆転させて描いたもの。女性が経済力を持つようになって恋の図式が変わってきたということを伝えたかったのです。

性愛を含む女性の生き方に正解はない

どこまで濡れ場を描くのかも悩ましい問題でした。けれど女性を赤裸々に描くと決めた以上、攻めの姿勢でいくことに。春画などを参考にしながら大胆に描くことにしました。予想通り、私の周囲では赤坂が全裸で優子に迫るシーンに発情する女性が続出してくれましたね。(笑)

かつて雑誌で「今リアルの恋愛」をテーマに取材をしていた時期がありまして、男女あわせて100人くらいに話を聞いたでしょうか。もっとも印象的だったのは、駆け落ち未遂をしたという女性。美人でハキハキとして聡明そうなこの女性が? と少し驚きながら話を聞いていたのですが、「私は女でいたかった」という一言にハッとしました。彼女は性欲という名の修羅を飼っている。これからも性欲に翻弄されながら生きるのだろうと私は直感したのですが、それが幸せなことなのか、不幸なことなのかはわかりません。性愛を含む女性の生き方に正解はないのです。

本能と理性のせめぎ合いにどう折り合いをつけるのか

女性の40代は恋の熟齢期といえるでしょう。子離れの寂しさが募る時期であり、そこへ、夫とはすでに男女の関係ではないという虚しさが重なる。すると私の女としての人生はこれまでなのかという焦燥感や絶望感に襲われる。そんなときに女性として見てくれる男性に出会ったら。優しくされたら。好意を寄せられたら、トキメキを覚えるのは無理のないこと。なのですが……。

杏とまりと優子が、自らの本能と理性のせめぎ合いにどう折り合いをつけるかが最大の見どころとなるでしょう。3人がそれぞれの結論を導き出すまでの過程を、ハラハラドキドキしながら見守っていただきたいと思います。

柴門ふみ©️婦人公論

終わりに

11月6日、TBS金曜ドラマ『恋する母たち』は第3話を終えました。3人の恋母たちは、ついに一線をこえます。今後柴門ふみさんが問題提起した

「母親が恋愛に踏み切るとこんなに酷い目に遭いますけれど、どうします?」

が、このドラマの面白さになります。まり優子が、自らの本能と理性のせめぎ合いにどう折り合いをつけるか? 楽しみです。

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