※本ページにはプロモーションが含まれています。

ギリシャ神話「曙の女神エーオースとティトノス」不老不死の話

曙の女神エーオース(オーロラ)曙の女神エーオース(オーロラ:右上)

女神が犯した致命的なミスとは?
毎朝、曙の女神エーオースは太陽神アポロンの御車の前を登って行きます。
ある日、女神は天から地上を見ると、トロイアの王子ティトノスが目につきました。
「彼と一緒になりたい」女神は、恋に落、連れ去りました。
また、「この青年と永遠に暮らしたい」と思い、ゼウスにティトノスの「不死」を願いでます。ゼウスは許可。
そして、数10年がたって、女神は致命的なミスを犯したことに気づきました。
それは、ティトノスが老いていくこと、「不老」ではなかったのです。
老いたティトノスは、干からびて小さくなり、女神はあきらめて彼をセミに変えました。

日本人の平均寿命と健康寿命

2010年に厚生労働省などが行なった調査によると、日本人の平均寿命は男性が79.55歳、女性が86.30歳です。 これに対して、健康寿命は男性70.42歳、女性が73.62歳。
ですから、男性は70歳を過ぎると、病気など体の衰えが出てきて健康ではいられなくなるということです。死ぬことは避けられませんが、死ぬまでは何でも美味しく食べたり、旅行にも自分の足で自由に行ける健康体でありたいと思います。

そんな夢のような薬が、できるとしたら服用したいですよね。そんな記事が『週刊新潮』2月18日特大号に掲載されていました。

東大・中西教授「老い」の正体つかんだ!GLS1阻害剤

『週刊新潮』2月18日特大号©️『週刊新潮』2月18日特大号

以下は、『週刊新潮』からの抜粋です

どれほど食生活に気を配り、適度な運動を心掛けても、「老化」自体を避けることはできない。今年1月に発表されたのは、そんな常識を覆す衝撃的な研究結果だった。新薬を用いて老化細胞を除去する革新的な抗加齢療法は、人類を「不老」といつ夢に導くのか——。

人間の寿命は120歳

「人間の寿命を120歳以上にすることはできません。しかし、人生の最期の瞬間まで元気に過ごせるよう、健康寿命を延ばす薬は作れるのではないか。今回の発見はその糸口になり得ると考えています」
東京大学医科学研究所(癌防衛シグナル分野)の中西真教授はそう語る。

〈人間は加齢に伴って、動脈硬化や糖尿病といった疾患を引き起こす(老化細胞)を体内に蓄積していく。研究チームは、この老化細胞が生存するために不可欠な、GLS1という遺伝子を特定。老齢のマウスにGLS1の働きを妨げる薬剤を投与したところ、老化細胞の大半が除去された〉
中西教授は今後も研究を進め、5〜10年後には臨床試験をスタートさせたいとしている。

「細胞は分裂を繰り返し、ある回数、人間の場合はおよそ50〜60回を超えたところで分裂をやめてしまうのです。このように細胞が分裂寿命を迎えて正常な周期を外れ、不可逆的に増殖をストップさせることを"細胞老化"と呼びます。
また、この分野の研究が進むにつれて、細胞老化は加齢だけではなく、がん遺伝子の活性化や酸化ストレス、DNAの損傷といった様々な要素によって誘導されることも判明しました。こちらは、"ストレス性の細胞老化"と呼ぶことができます」

GLS1の働きにストップをかけ自然に細胞死へ導く方法

「人間の細胞はリソソームという細胞小器官を備えていて、その内部は、古くなったタンパク質を取り込んで分解するために強力な酸性で満たされています。老化細胞の場合は、リソソームの膜に傷ができてしまい、その傷ロから水素イオンが染み出して細胞全体が酸性に傾いていく。問題はここからです。正常な細胞は、内部が酸性になるとやがて細胞死を迎えますが、老化細胞はそうではありません。細胞内にあるGLS1のスイッチをオンにして死滅するのを防いでしまう。

より具体的に説明すると、GLS1はグルタミンをグルタミン酸に変換する働きがあり、同時にアンモニアを産出します。このアルカリ性のアンモニアによって、酸性に傾いた細胞内を中和するのです。そのことを見出した私たちは、GLS1の働きにストップをかけ、老化細胞内の酸性を維持しつつ、自然に細胞死へ導く方法を考えました。いわば補給線を絶って、老化細胞を兵糧攻めにするわけです」
果たして、中西教授らが開発したGLS1阻害剤をマウスに投与すると、老化細胞は一網打尽となったのである。

マウスの老化細胞を除去すると30秒が100秒に
中西 わかりやすい例を挙げると、マウスも年を取ると筋力が弱くなります。高い鉄棒につかまっているとだんだん疲れて落ちてしまいますよね。マウスも棒につかまるんですが、若いマウスだとだいたい200秒くらいはつかまっています。一方で年を取ったマウスだと30秒くらいしかつかまれません。
しかし、老化細胞を除去すると100秒くらいまでつかまれるようになるんです。人間で換算すると60歳くらいの人が30歳くらいの筋力になったという感じです。
(3月8日発売『週刊プレイボーイ』)

※だから、夢の薬は、GLS1阻害剤ということになります。

「老化細胞は増殖機能こそ失われているものの、炎症性タンパク質を分泌するクSASPと呼ばれる特徴を持っています。そのせいで臓器や組織で慢性炎症を引き起こし、様々な加齢性疾患の原因にもなる。
具体例を挙げると、脳ではアルツハイマー病をはじめとする認知症、目では白内障や緑内障、血管に由来するものだと動脈硬化など。心臓においては心不全や心筋梗塞、さらに、血中のインスリンに対する感受性が低下して糖尿病の悪化リスクも高めます。また、最近では、サルコペニアという加齢性の筋力減退の原因になるとも指摘されている」

動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病など、新型コロナの重症化リスクや死亡率を高め、高齢者の健康を脅かす疾患の背後には、常に老化細胞が潜んでいるわけである。しかも、老化細胞が分泌する炎症性タンパク質は遺伝子をも傷つけ、組織の"がん化"まで促してしまうというから厄介なのだ。
だが、重要なのは「細胞の老化=悪」と単純に言い切れない点だ。これまで述べてきたことと矛盾するようだが、細胞の老化は人体に有益な側面もある。

「細胞老化のプラスの作用として挙げられるのは、がんを防ぐ役割です。がん細胞は正常な細胞の遺伝子に2〜10個ほどの傷がつくことで発生し、体からの命令を無視して増え続け、大切な組織を壊してしまう。これに対し、人間の体はがん細胞とその周囲の細胞を老化させることで増殖に歯止めをかけてきました。つまり、細胞の老化はがんを防ぐために人体に組み込まれたプログラムということができます」

つまり、細胞老化のプロセスと老化したMll胞そのものを切り離して、アプローチするということだ。実は、GLS1阻害剤はすでに抗がん剤として臨床試験が進められている。

※ちょっと難しい内容ですが、詳しくは『新潮』をお読みください。